療育パワーアップ講座

なぜ,遊びは子どもの想像力/創造力を育むのか

遊びと発達の研究家,まっつんです。

「子どもの仕事は遊び」というぐらい,子どもにとっては非常に大切な生活のメインです。 子どもの頃,夕日が沈むまで,親に怒られるまで遊び続けた人も多いのではないでしょうか。
子ども時代にあなたはどんな遊びをして過ごしましたか?

年代や性別によって遊びの種類は様々です。 遊びそのものには特に意味はありません。でも,そんな遊びがその種類には関わらず私達の発達を後押ししてくれていました。
遊びには,想像力/創造力を育む力があります。 それは,遊びのどの様な要素が関係しているのでしょうか。

私達は,遊びを通して大人になっています。 ほとんどの人が無意識のうちに遊びを体験してきているがゆえに,その「遊び」について振り返って考えることは少ないでしょう。

しかし,「子どもの仕事は遊び」というくらい発達においては大切な要素です。 教育や福祉,そして子育てなど子どもと遊びに関わる人に向けて,今回は「なぜ,遊びは子どもの想像力/創造力を育むのか」をまとめたいと思います。

〇遊びは様々な機能を使う

遊びの種類は様々です。 家の中でする遊びから,外でする遊び,川や海などでの水遊びなど,その場面とおもちゃによってもいろいろな遊び方ができます。

その中で,子ども達はいろいろな機能や能力を発揮しています。 友達とコミュニケーションを取ったり,身体を動かしたり,自然を利用して遊んだり。

様々な遊び方の中で,様々な機能を使うため遊びは子どもの中の想像力/創造力を育んでいきます。

では,遊びが想像力/創造力を育む理由,そしてその背景でどんな機能が働き,どんな要素が作用しているのか一つずつ見ていきましょう。

シンボル機能をふんだんに使う活動だから

子どもは遊び道具を見つける天才です。
新聞を丸めて剣と盾をつくって闘ったり,お人形の洋服にしたり,時には新聞を広げて家をつくったり。 新聞一つだけでも様々な遊びを創りだしていきます。

この時,子どもの中では新聞を「剣」や「盾」,「洋服」「家」に見立てる機能が働いています。 これがシンボル機能といわれる能力です。

シンボル機能は何かを何かで置き換える能力です。 上の例では,新聞を「剣」や「盾」などに置き換えて遊んでいます。

シンボル機能について詳しくは

他にも,泥団子を使ってままごとをしたことがある人も多いのではないでしょうか。 これも,泥団子を料理に置き換えて遊んでいるのです。

この様に,何かを何かに置き換えて遊ぶ時にはシンボル機能が働いています。 そして,このシンボル機能は抽象的な思考の基になる機能でもあります。

遊びの中で,シンボル機能がたくさん使われ,使いこなせるようになることで子どもたちは想像力の源を獲得していくのです。

周囲の現象を取り入れていく

再びままごとの例を出してみましょう。

ままごとの中で,子どもは大人を演じています。 お母さんみたいにしゃべったり,仕事をしているふりをしたり,学校の先生になって生徒にお説教をしてみたり。

この様にままごとの中で演じることで,子ども達は周囲の「役割」を自分の中に取り込もうとしているのです。 もちろん,子ども達は「役割を取り組むぞー!よし,今日は”お父さんの役”だー!」なんて意識をしているわけではありませんけど。

この「役割」を取り込むことで,人はそれぞれの立場に立った想像ができるようにもなります。 また,「役割」を演じる際にはイメージの力も使っているため,体験と想像との間をつないで世界を広げることができる様になっていきます。

人と意見を出し合う体験

遊びは一人でやる事もありますが,誰か他の人と一緒にやる事もあります。

誰か他の人と一緒に遊ぶ時には,自分の意見だけだはなく他の人の意見を聞かなければ遊びは始まりません。 時には,ジャイアンの様な遊びのリーダーが出てきて,遊びを支配してしまう事もありますが。

でも,意外と子どもは平等なもので,誰かが苦手とする遊びをする時はその子に合わせてルールを変更したりします。 ある程度平等に遊ばないと自分もつまらなくなってしまうことを学習しているのです。

その時には,もちろん参加者同士で「どうする?」「こうする?」と相談をしているわけです。 この相談することや遊び方を模索していく中で話し合うことで,自分とは異なる他者の意見に触れることになります。

自分とは違う意見や,上に出てきた自分とは違う「役割」を自分の中に取り込んでいくことで,子どもの想像力は広がっていきます。

“あそび”のある遊びは工夫を生み出す

最近はゲームやおもちゃも進化して様々な遊び方ができる様になってきました。 時に,遊具に”遊ばさせられている”様な逆転現象も起きていますが,子どもの遊びの本質は「発展」にあると言っても過言ではありません。

子どもは遊んでいる中で,その遊びの更なる楽しい遊び方を開発していきます。 遊びには「発展」ためのエネルギーが内包しているのです。

例えば,ブロック遊びなどは家や建物をつくっていくうちに街づくりへと発展していったり,そこにミニカーが加われば,街中でのレースが始まるかもしれません。 ゴムでっぽうの様な単純な機能だけを持つおもちゃも子どもの手にかかれば,刑事ごっこの小道具になるかもしれないし,射撃大会が始まるかもしれない。 そして,射撃大会の中でも的の置き方や特殊ルールを創りだしたり,男の子だと「必殺技」の開発が始まることもしばしば。

“あそび”のある遊びとは,その「発展」していくための余白をもった遊びの事です。 だいたいの遊びが”あそび”部分を持っていますが,ゲーム,とくにテレビゲームなどは遊び方がすでに決められているのでその”あそび”部分が少ないと言えます。

もちろん,”あそび”部分が少ないゲームも子どもの成長のために意味のないものではありません。 その様な遊びは,反対に決められたルールや遊び方の中での創意工夫や,その遊び方の中での技術力の向上を促したりしていきます。

「発展」の方向性は異なりますが,子どもの工夫を引き出す力が遊びにはあるのです。

なにより,遊びは自発的な活動だからモチベーションが高くなる

遊びは,子どもによって自発的に始められます。 ゆえに,遊びにおけるモチベーションはとても高いものになるのです。

そして,遊びは楽しいからこそどんどんやりたくなります。 それが,「発展」の部分と合わさって,どんどんと自分のできることのもう少し上の段階に挑戦していこうという力になります。

遊びの中では,発達の最近接領域への挑戦が常に自然な形で行われているのです。 発達の最近接領域は,自分一人ではまだ完全にはできない,他者の力を借りるとできる様になるような能力をさす言葉です。

発達の最近接領域について詳しくは

発達の最近接領域への挑戦には,周囲の友達や他者の影響がとても大きく作用しています。 高いモチベーションで,時には友達の力を借りながら自分のできる限界へ挑戦していくことで,新しい能力や技能を獲得したり,ひいては「出来た!」という自信を得たりしていくのです。

まとめ

遊びにはとても様々な要素が影響しています。 もちろん,今回あげたことだけが遊びのすべての要素ではありません。

遊びについて,子どもに関わる親や支援者の人達が理解することは,子どもにとってより良い遊び環境を守っていくことの第一歩です。 子どもの成長にとって遊びは決して切り離すことのできないことです。

勉強や構造化された中でのスキルの習得もとても大切な要素ですが,それと並行して豊かな遊び環境が整っていることは子どもの健全な発達を促す何よりの要素なのです。
子どもは自発性の塊だと言われています。 その自発性がもっとも発揮されていくのが遊びなのです。

遊びは私たちの生活の中で自然にあるものなので,その効果や機能について改めて考える機会はなかなかないかもしれません。 しかし,子どもの成長にとって欠かせない一つのピース,それもとても大きなピースが「遊び」です。

子どもを想像力/創造力豊かな子に育てたいと思ったら,子どもが遊びに没頭できる環境を用意してあげましょう。 子どもは遊びの中で自然と成長していくので,何も大人から押しつける必要はありません。

この記事が,ぜひ子どもと「遊び」について改めて考えてもらうきっかけになったらと思います。
以上,まっつんでした。

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ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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