療育パワーアップ講座

遊びを支援する―発展のある遊び・ない遊び

どうも,遊びと発達の研究家,まっつんです。

以前の記事で,発達を促すおもちゃの選び方について書きました。

その中で「発展のあるおもちゃ」についても触れましたが,今回はこの「遊びの発展性」についてもう少し詳しく書いていきたいと思います。

子ども達は遊びの中で自分の持てる力を思いっきり発揮していきます。 思いっきり発揮した力に対して,遊びの枠がせまければ,子どもはどんどん遊びを発展させて広げていきます。

この,「遊びの発展」とはどういうものなのか。 そして,発展のある遊び,ない遊びとは何か。 子どもの成長のためにはどちらを進める方が良いのか。 発展のない遊びは子どもの成長にプラスにはならないのか。
などをまとめていきます。

お母さんやお父さんは,子どもと遊ぶ時の参考にぜひ。 放課後等デイサービスや学童保育など「子どもとの遊び」を仕事にしている人にはぜひ専門的な視点の拡大にもお役立てください。

遊びの「発展性」とは

子どもの遊びにはいろいろな種類があります。 感覚遊びや模倣遊び,構成遊びなどなど。
様々な種類の遊びがありますが,それらに共通していることは「遊びの中にも一定の枠組みがある」という事です。 一定の枠組みとは,その遊びを行う上での共通認識や遊びの方向性の様なものです。

例えば,積み木で遊んでいる男の子がいます。 その子は今積み木を積み上げてお城をつくっています。 この時の,「枠組み」は”積み木を組み合わせて積み上げる”という遊び方の認識です。

ところが,ここでセロテープを持って一緒に積み木をしに来た女の子が現れました。 その子は,セロテープで積み木と積み木を片側ずつ貼り付けると,ぐねぐねする「ヘビ」をつくりました。 それを見ていた男の子は,一緒になって積み木をテープでつなげて関節の動くロボットをつくり始めました。

この時,積み木遊びは”積み木を組み合わせて積み上げる”という枠組みから,”テープを使って動かす”遊びへとその枠組みを変化させたのです。

これが,遊びにおける「発展」の例です。

一方,ここにもう一人別の男の子がやってきました。 この男の子は,積み木を積み上げるのではなく,それぞれ横に並べて”ジェンガ”の様に並べて倒し始めました。 “組み合わせて積み上げる”という枠組みではなく”並べて倒す”という枠組みで遊びを展開したのです。

この様に,何かと何かを組み合わせて遊び方を変化させたり,積み木そのものの使い方を変化させることで遊び方の枠組みを変えていくようなことが「遊びの発展」です。

遊びの発展はもちろん,何かおもちゃを使っている時以外にもみられる現象です。 「こおりおに」や「いろおに」などは,まさに「おにごっこ」の発展形といえます。

おもちゃのタイプが「発展性」に影響する

子どもは自分たちの能力やその場の状況に応じて遊びを発展させていく力を持っています。 それは元来子どもたちの中に備わっている能力なのですが,おもちゃの種類によっては発展させる力が影響を受けていきます。

発展しにくいおもちゃの代表的な例は,「テレビゲーム」でしょう。 テレビゲームを製作者の想定していない遊び方で遊ぶことはなかなか難しいです。
それは,テレビゲームが”その様に遊ぶもの”として,とても強い枠組みを持っているからです。
そして,その一点に特化しているからこそ,あれだけの子どもの心をひきつけていく理由でもあります。

特に,日本製のおもちゃは一点の機能に特化した高い技術力でつくられているものも多く,その遊び方はより洗練されています。 以前の記事では,ベイブレードを例に出しましたが,機能が特化している故にその遊び方は限定されてしまうのです。

この遊び方が限定されている状態は「発展性の低い遊び」といえます。 自然な状態ではなかなかそこから遊びを発展させにくいおもちゃもあるのです。

子どもの成長のためには

「発展のある遊び」「発展のない遊び」どちらが良いの?

結論から言ってしまうと,発展のある遊びもない遊びもどちらも子どもの成長を促していくことができます。 しかし,その促す成長の質・種類がそれぞれ異なるのです。

テレビゲームは有害だ!という言論が一時期話題になりましたが,テレビゲームだって遊びこんでいくことで子どもの成長を促進していきます。 特に,最近のゲームは,情報や時間,資源の管理をするようなマネジメント力を育むことができるゲームも多くあり,それは他のおもちゃではなかなか代替できないような特徴です。

問題なのは,遊びがそれだけになってしまうことです。 この次のメリット・デメリットのところでも書いていきますが,発展のある遊びばかりをしていても個別の能力としてはなかなか伸びにくいというデメリットもあります。 遊びの種類もそれひとつという固定をするのではなく,幅広く遊んでいけることが望ましいのです。

発展のある遊びのメリット・デメリット

発展のある遊びは,子どもの想像力を豊かに刺激していきます。 こちらは,今ある状態からさらに広げていくという「拡大性」という性格を持っています。

今ある遊びからもっと自分の力を発揮していくためにはどうやればいいか。 もっともっと楽しく遊ぶためにはどうすればいいか。

今の状態からさらに広げていくためには,想像力を発揮して新しいことを考えていかなければなりません。 その過程は子どもの心の柔軟性も広げてくことにもなります。

一方,発展のある遊びの基本はその自由なところにあります。 そのため,一定のルールを守ることや,決められた枠に従って行動するという自分を制御する能力の成長は期待できません。

発展のない遊びのメリット・デメリット

発展のない遊びでは,その遊び方・枠組みが予め定められているので,子どもはその枠の中で創意工夫をしていくことができます。 この決められた条件の中でより良い状態を目指すという「最適化」の性格を発展のない遊びは持っているのです。

枠組みが決められているので,心理的なエネルギーは自分の技術やその枠の中でいかに上手くふるまうかという方向性に注力することができます。 これは,子どもの中の個別の能力を育んでいくのにとても役に立ちます。

また,上でもふれたように発展のない遊びには一定のルールが伴う場合も多いため,集団の中で適応するための能力を伸ばすこともできます。 ルールを守る力,決められた条件の中で自分の能力を発揮する手段などです。

その枠組みの中では夢中になれますが,視野を広げたり,柔軟性を獲得していくことは発展のある遊びの方が向いています。

まとめ

遊びには,発展のある遊び・ない遊びがあります。 ただし,発展のない遊びといっても発展の可能性が全くないわけではなく,時にはルールのある遊びを自分たちに合わせて変化させたりすることもあります。

発展のない遊びは,「発展性の低い遊び」だと思ってください。

遊びは,子どもによって自発的に引き出されていく行動です。 それ故にとても高いモチベーションと達成動機を持っています。

ちょっと難しいことでも遊びの中なら挑戦していく。そして,知らず知らずの間に子どものできることが増えている。 そんな力が遊びにはあります。

遊びはとても日常的なもので,私たちの生活の中に当たり前に存在する行為です。 でも,遊びには非常に多彩な面があります。

子どもと関わる方々はぜひ,そんな遊びの多彩な面を子どもの豊かな成長のために活かしてもらえたらとても嬉しく思います。
以上,まっつんでした。

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ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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