【ワーキングメモリー】
作業記憶,作動記憶とも呼ばれる。ワーキングメモリーは,短期記憶の概念を発展させたものであるが,短期記憶が情報の貯蔵機能を重視するのに対し,ワーキングメモリーは,会話,読書,計算,推理など種々の認知機能の遂行中に情報がいかに操作され変換されるかといった,情報の処理機能を重視する。(心理学辞典,有斐閣より)

〇ワーキングメモリとは,情報の「作業机」

私達は日頃の生活の中で,様々な情報を覚えて,処理している。例えば,レシピを見ながら料理を作るとき,あなたはレシピを覚えながら,作業の手順を考えたり,実際に行動に移しているでしょう。

学校の生活場面では,例えば,国語のテストで問題文を読んで問いに答える時などは,問題文の内容を覚えておきながら解答をしているでしょう。この様な,一時的に情報を覚えておきながら,作業する能力は「ワーキングメモリー」と呼ばれています。

つまり,ワーキングメモリーとは,行動を起こしたり,問題を解いたりするために必要な情報を,一時的に置いておくための「作業机」のようなものなのです。

机はそれぞれ大きさが異なるように,人によってこのワーキングメモリーの容量,つまりは同時に覚えておきながら処理できる情報の量にはそれぞれ差があります。

これは,何らかの情報の処理をしながら,そのために必要な情報を一時的に覚えておくことが苦手な人もいれば,得意な人もいるということでもあります。

例えば,料理を作るときに,材料(=情報)冷蔵庫から取り出してキッチンに広げながら作業をしようとすると,そこにおける材料(=情報)の量は,キッチンの広さによって変わります。

同じ料理を作るためにも,同時に一気に材料を冷蔵庫から取り出して(=一気に情報を把握して)料理が出来てしまう人と,ちょっとずつ材料を小出しにした方が作業をしやすい人がいるという事です。

ワーキングメモリーは,情報を聴覚的情報と視覚的情報にわけて処理し,中央の司令塔の様な機能がその調整や,長期記憶との連絡を行います。

これは,それぞれ「音韻ループ」「視空間スケッチパッド」「中央実行系」と呼ばれる機能であり,ここにも個人差が生じ,聴覚的情報の処理が得意な人と,視覚的情報の処理が得意な人とが分かれる要因になります。

音韻ループの例えでいうと,「掃除をするからほうきを取ってきて」と言われて,掃除用具入れから取り出すまで「ほうき」を覚えておくことや,電話帳で調べた番号をかけるまで一旦覚えておくといったことも含まれます(番号を音声的に頭の中でループさせて覚えておくため」)。

視空間スケッチパッドの例では,見本を見ながら絵をかく時に見本を覚えておくことや,野球でピッチャーが投げるタイミングを一時的に記憶してタイミングを計ったりすることなどがあげられます。

音韻ループにも視空間スケッチパッドにもそれぞれ容量があり,決まった量を超えて情報を保持しておくことは難しくなります。

私達は,日頃の生活の中でこのように,一時的に情報を覚えておいて作業を行う,と言った場面が数多くあります。
特に,学校や会社などの社会的な場面ではその機会も多くなります。

一度に処理できる情報量には差があるという事は,「視力は人によってちがう」と同じようなことです。

自分のワーキングメモリーに合わせて,メモを取ったり,作業を分割したりと記憶処理を補助する工夫をしたり,また,人に情報を伝えるときは相手に合わせて,情報の量や伝え方を変えていけると良いですね。

〇療育へのまなざし

発達障害を持つこの中には,ワーキングメモリーの容量があまり大きくない子が多くいます。特に,LD(学習障害)の子では,言語的に遅れの見られないタイプ,むしろ雄弁に語るようなタイプの子でもワーキングメモリーに弱さを持つ子がいます。

知的に遅れのないLDの子の場合,学習への理解の困難性よりも,ワーキングメモリーの容量不足による情報の処理への困難性がつまづきの原因である場合も。

また,情報の処理困難性が学習への理解を妨げている場合も往々にしてあります。

その子のつまづきがどこにあるのか。また,ワーキングメモリーの容量はどの程度,つまり同時に処理できる情報量はどれくらいなのかを見立てていくことが重要です。

ワーキングメモリーの容量に合わせていくためには,一度に提示する情報量を調整したり,情報提供から理解するまでに時間を長くとったり,また,情報を段階的に分けてスモールステップを設定したりといった工夫が考えられます。

発達障害を持つ子は,一般的に視覚提示による,絵や図などの視覚情報の方が処理が得意と言われていますが,視覚情報処理か聴覚情報処理のどちらが得意なのかは,それぞれ人によって異なります。
絵や図での情報では混乱してしまうタイプの子もいるので,その点は注意が必要でしょう。

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