【療育プチコラム】移行対象〜安心の成長〜

療育プチコラム〜移行対象〜 療育プチコラム
【移行対象】 イギリスの精神分析医ウィニコットが,毛布,タオル,ぬいぐるみなど,乳幼児が特別の愛着を寄せる様になる,主に無生物の対象に対して当てた術語。心理学辞典,有斐閣
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ライナスの毛布

 世界的に有名なスヌーピーが出てくる「ピーナッツ」。ピーナッツの登場人物にいつも毛布を持って指しゃぶりをしたライナスという男の子が出てくるのは知っていますか。ライナスはお気に入りの毛布がなくなるとすぐに泣いてしまいます。ここにはどんな心理が隠れているのでしょうか。

移行対象とは

 ライナスの毛布に例えられる様に,1歳〜2歳くらいの乳幼児期には毛布やガーゼ,ハンカチ,ぬいぐるみなど比較的柔らかい玩具を好んでずっと持ち歩く姿が見られることがあります。これは心理学的には”移行対象”といい,情緒を落ち着ける効果があります。持ち歩くものは無生物で乳幼児はそこに特別な愛着を感じています。
では,この「移行」とは何から何への移行なのでしょうか?

一者関係から二者関係へ

 子どもは生まれたばかりの頃はなんでも自分の思い通りになるという仮想的万能感を持って生活しています。しかし,子どもも成長するに従って,自分の思い通りにはいかないことを経験していきます。例えば,ミルクを飲みたいけどすぐにはないとき,お母さんに近くにいて欲しいけどお母さんがそばにいないとき。そんな時に,子どもは母親の温もりを代理するものとして毛布やぬいぐるみなどを抱っこすることで安心感を得るのです。こうして子どもは仮想的万能感の錯覚の中から次第に現実世界へと移行していき,情緒を落ち着けていく術を学んでいくのです。
 毛布は「最初の私ではない所有物」として,子どもの情緒を落ち着けるアイテムとして機能します。こうして子どもたちは自分だけの世界から,他者のいる二者関係の世界へと成長していくのです。

欧米と日本の違い

 ウィニコットが研究をした欧米では,この様に移行対象を用いる子どもは60〜90%と高い数値を示しました。しかし,日本では30〜40%ほどしか移行対象を用いるこはいないという研究結果が出ています。
 ここには,欧米の生まれてすぐに子ども部屋で養育するスタイルと日本の様に,川の字や添い寝をするスタイルの違いが現れている様です。

移行対象は愛情不足?

 結論から言うと,子どもが移行対象に愛着を向けるのは決して親の愛情不足から起きることではありません。子どもが自ら成長の中で必要なことを選択して行動に移していることの現れなのです。2歳前後の子が愛着を向けるぬいぐるみはしばしば人格化された対象として,子どもの最初の遊び相手や想像上の仲間として子どもに寄り添ってくれます。子どもは移行対象の時期を通して,外界と接する練習をしていくのです。

療育へのまなざし

 自閉症を持つ子の場合,しばしば特定のものに対して強い関心を持つ場合があります。それは「こだわり」と呼ばれることも多く,それがないとパニックを起こしたりすることがあります。自閉症を持つ子の「こだわり」の対象物も機能的には移行対象と同じくその子の情緒を落ち着けるものとして機能している場合が多いでしょう。そう言うときは無闇矢鱈に「こだわり」の対象物を外すことはしないで大丈夫です。自閉症を持つ子にとって現実世界は予想のつかないことの連続です。そんな中において「こだわり」の物=移行対象を持ち続けることは自分でその場のネガティブな感情に対処するための方法なのです。
 療育において大切なのは,その「こだわり」の対象を取り外すことにフォーカスするのではなく,「こだわり」がなくても安心できる体験を多く積み重ねてあげることでしょう。安心できる雰囲気の中で,「こだわり」の物がなくても療育課題に取り組めたり,日常生活を送れる様にサポートしてあげることが,療育においては大切なことです。
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