療育のキーワード

【療育プチコラム】象徴遊び~ごっこ遊びって療育的にもこんな意味があるんです~

【象徴遊び】 具体的なものの代わりに別のものを用いたり,自分の動作でもって置き換えた遊び。

心理学辞典,有斐閣

象徴遊びとは

子どもの遊びを見ていると,砂場で泥団子を作りながら「これ,今日の夕飯!」なんてやっているシーンよく目にしますよね。

この様に,何かを何か別のものに見立てる様な遊びを「象徴遊び」と呼びます。
泥団子をハンバーグにしたり,葉っぱをお皿にしたり,木の枝をお箸にしたり,今目の前にないものを目の前にあるもので置き換えて遊ぶことです。

象徴遊びってごっこ遊びだけ?

象徴遊びは,おままごとのようなごっこ遊びだけなのでしょうか。

幼児や児童期の遊び場面を見ていると,他にもブロックを使ってお城をつくったり,ロボットをつくったりといった遊びもみられます(これを構成遊びといいます)。

これもブロックを組み合わせて,今目の前にないお城やロボットに置き換えているという点で象徴遊びの一種です。

他にも,想像遊びや模倣遊びなんかも広い意味で象徴遊びの一つとして数えられます。

また,ビューラーとシュテルンはそれぞれ,虚構遊び,高度な対象遊び・役割演技遊びとして象徴遊びを分類しています。

象徴遊びはいつ頃から見られるの?

象徴遊びは,およそ生後1年ごろから見られるようになり,2歳から7歳ぐらいまでに活発になってきます。

これは,子どもの中に目の前にない実在を再現する力=象徴機能が芽生えてきた証拠の一つです。

ただし,これは子どもが頭の中で物事を考えられるようになったという訳ではなく,まだこの頃の思考は知覚の影響を強く受けている段階です。 つまり,まだまだ見かけの影響に騙されやすい時期なのです。

象徴遊びの発達的意義

象徴遊びが発達していくことは,社会性を自分の中に取り入れていく最初の一歩だと言えます。

象徴遊びのひとつである,模倣遊び(大人のまねをする遊び)は大人という自分以外の存在の”役割”を真似することで,自分の中に取り入れようという働きです。 さらに,ごっこ遊びでされるような”役割”を演じる遊びは,そのまま大人や自分以外の存在の振る舞いを内在化し,理解するという意義があります。

ピアジェは,この時期を「遊びから適応的知的行動へ移行する過程の中間である」としています。
子どもは,象徴遊びを通して,物の扱い方やそれぞれの社会的な”役割”を理解して自分の中に取り入れようとしているのです。

療育へのまなざし

放課後等デイサービスなどで行われるような,療育的意図をもった遊びとして象徴遊びはとても重要な遊びの一つです。

見立てたものを他者と共有する,ごっこ遊びで他者の視点に立って行動を理解する,これらは発達障害を持つ子にとって非常に発達的意味をもつ遊びです。 もともとの他者理解への困難さを持っている子が多い中,他者視点を楽しんで自然と身に付けることができる「遊び」はとても役に立ちます。

元来,子どもは遊びに対しての強い動機を持っています。つまり,楽しければ自然と遊び始めるのです。 座って学習するSSTに比べて,自然と身に付けた他者の視点や役割理解は,他の場面などにも広がっていきやすくなります。

SSTのスキルが般化しにくいという問題点を補う事が「遊び」を通して狙うことができるのです。 療育的視点に立って,遊びを理解することの意義はその様な点にもあります。

実際の,ごっこ遊び等の場面で大人が関わるためには,子どもと同じ目線に立って想像の世界にどっぷりとつかることが大切です。 時として大人は,現実的ではない場面が現れると「水を差してしまう」事がありますが,想像の世界ですからなんでもありです。

空想の場面で,じゃあその役割の人ならどうやって行動するか,という事を考えてもらい,引き出していくことも療育的意図をもった象徴遊びの大切な要素です。

最後に,ひとつごっこ遊びをする際の工夫として,子どもの発達段階に合わせて,出来るだけ見立てられる「物」を用意すると遊びが広がります。 上に書いた通り,発達の段階として物の知覚に大きな影響を受ける時期があります。その時期では,いわゆる「パントマイム」によるごっこ遊びでは,「物」を共通して理解することが難しい場合があります。

例えば,積み木でも良いので,何か対象になる元のものを用いた方が,「物」の理解がスムーズになり,ごっこ遊びに集中して取り組むことができます。 ちょっとした工夫ですが,ごっこ遊びに子どもが乗らない場合はその様な見立ての困難さの段階的な問題があるかもしれません。

象徴遊びは,子どもの想像性と創造性を強く刺激するので,発達的にもとても有効な遊びです。 遊びの本質は「自発性」なので,子どもが遊びたくなるような楽しい雰囲気を演出することも大切な要素です。
大人もぜひ一緒にごっこ遊びを楽しんでください!

ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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