療育のキーワード

【療育プチコラム】自己受容~ありのままを受け入れるために必要な事とは?~

【自己受容】  自己のありようをそのまま受け入れること。

心理学辞典,有斐閣

自己受容とは,そのままの自分を受け入れる

アナと雪の女王のヒットからかなり経ちましたが,今回のテーマ「自己受容」はまさにあの主題歌の通りです。

人には大なり小なりみたくない自分の部分がありますね。 性格だったり,能力だったり,見た目の話だったり,今までの経験だったり。

一方,人生においてマイナスな出来事があれば,プラスな出来事もあると思います。

自尊感情が,自分の肯定的な面への評価だったのに対して, 自己受容は,そんなプラスの面もマイナスの面もひっくるめて,両方をそのままの自分を自分として受け入れる感覚の事です。

自尊感情について詳しくは↓

なぜ,自己受容がカウンセリングの目標となるのか

自己受容はしばしばカウンセリングの目標として掲げられます。

なぜ,カウンセリングにおいて自己受容が大切になるのでしょうか。

自己受容できていない状態というのは,人は誰でも持っている自分のマイナスの面を否認したり,抑圧することで目を向けていない状態です。

否認されたり,抑圧されたマイナス面は無意識化に心や身体に影響を及ぼしてしまいます。

カウンセリングでは,安全安心な場所で保護された状態でマイナス面も含めた自己受容を目指していきます。

自己受容を通して,自己への洞察が深くなり,行動の変革へと繋がっていくというのがカウンセリングの目指す一つの流れなのです。

自己受容は良好な対人関係に広がる

自分の失敗などを認められないと,どうしても対人関係の中では軋轢が生じてしまいますよね。
自己受容は,他者への受容と良好な対人関係の基盤にもなります。

自己受容は,心身の健康や社会の中への適応にとても大きな影響を及ぼすのです。

自己受容できる子に育つために必要なこと

自己受容のためには,自己理解が必要になります。

他者からのフィードバックも受け入れつつ,自分の良い面,悪い面の両方を理解することが必要です。

自分の悪い面を受け入れるためには,やはりある程度自分という存在に対して肯定的でなければいけません。 「自己受容のためだ!」と悪い面ばかりを指摘されていたら,ふつうつぶれてしまいますよね。

一度にマイナスを受け入れる器には,許容量があるのです。

そして,その器の許容量は,他人から自分という存在が受け入れられた経験や自分の肯定的な側面,自尊感情が積み上げられることによって広がっていくのです。

療育へのまなざし

発達障害を持つ子の場合,自己受容は障害受容としての側面も持ちます。

自分の発達的認知的特性を理解して受け入れていくことが,自己受容へとつながっていきます。

そこにはやはり,自己理解を促せるサポートが必要になってきます。 自己を顧みることが不得手な子も少なくないので,じっくりと落ち着いた状態で,決して負の面を強調したり追い詰めたりはせず,支持的に自己理解の促進をサポートをしていきましょう。

また,いわゆるアスペルガーや発達障害を持つ子の中には,「0か100か」の思考になりやすい子も多いです。 「0か100か」思考の子では,なかなかそのままの状態を受け入れることが出来ず,失敗した=もうすべてがダメだ!となってしまう場合も多くあります。

「0か100か」思考の子に対しては,失敗や悪い面があっても成功はなくならない,良い面は良い面として残るんだよという事を必ず一緒に伝えましょう。

一つの技として有名な「サンドイッチ法」という,マイナス面の伝え方があります。 これは,サンドイッチの様にマイナス面をプラス面の話ではさんで伝えるというものです。 「良いこと→悪いこと→良いこと」と,良い話で始まって悪い話も伝えつつ,最後はやっぱり良い話で終わる様にします。

知的な水準や特性によっては,この話し方だと逆に混乱してしまう子もいるので万人に使える方法ではありませんが,聴覚的な言語理解力のある子ならこんな手もあります。

反対に,視覚優位な子なら紙に書きだして「失敗のレベル分け」をしてみるのも有効です。 「0か100か」思考にならないように,「今回の失敗は10のうちの3レベルの失敗だったね(残りの7は成功だった!)」と,数直線上にプロットして視覚的に認識しやすくすることも理解の助けになります。

自己に関する概念では繰り返しになりますが,自己受容のためには,他者から受け入れられた体験や自分が成功した体験がとても大きな意味を持ちます。 自己受容のためには,その子のマイナス面を強調するのではなく,プラス面を支えながらサポートしていくことがとても大切です。

ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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