療育パワーアップ講座

子どもが主体的に動くようになる話し方

子どもに関わる仕事をしていると,常に子どもの成長を考えます。

子どもの成長には知能や認知機能,感情といった内面的な成長と,身体機能や行動,態度といった外面的な成長の2種類があります。

色々な能力の成長を願うのはきっと子どもに関わる仕事に携わる人間だけでなく,親ももちろん同じでしょう。 特に,自分の行動を考えて変えていけるようになることにはみんな気になる事でしょう。

遊んだおもちゃは使いっぱなし。 宿題はしないでゲームに夢中。
そんな子どもの気になる行動,どうやって変えていけばよいのでしょうか。

そして,状況を見て自分自身の行動を省みて判断できるようになるにはどうすれば良いのでしょうか。 ひとつのヒントとして,「説得」コミュニケーションと「納得」コミュニケーションを比較して考えてみましょう。

ついついやりがちな「説得」コミュニケーション

子どもは遊びに夢中。部屋中におもちゃが広がっています。 その後,おもちゃをしっかりとおもちゃ箱にしまえば良いのですが…。

さて,おもちゃを広げっぱなしの子に対して,あなたならどう対応するでしょうか?
ここでついつい「ほら,早くしまいなさい!」と叱りつけてしまいがちですよね。

叱りつけることは,こちらの言い分を相手に伝える行為。 つまり,相手を「説得」するためのコミュニケーションです。

行動を変えるなら「説得」よりも「納得」を使おう

確かに,子どもに対して取るべき行動を伝える「説得」のコミュニケーションは有効です。

しかし,子ども自身に自分の行動について考え,判断してもらう力をつけるには「説得」コミュニケーションだけでは不十分です。

子ども自身で行動について考える力をつけるためには,「納得」して先に進むことが重要なのです。

「納得」のコミュニケーションとは

「納得」コミュニケーションとはどの様なものでしょうか。

「説得」は,主に一方から他方へ意見や言い分を伝え行動の変化を促すためのコミュニケーションといえます。 それに対して,「納得」は他方からの意見や言い分を受け入れて,行動する人が自ら行動を変化させていくコミュニケーションと言えるでしょう。

その大きな違いは,言葉の”主体”が異なるという事です。

「説得」コミュニケーションが,いわば上から下に意見を通して行動を”変えさせる”のに対して, 「納得」コミュニケーションでは,周囲からの意見を取り込んで自ら行動を”変えていく”のです。

「納得」コミュニケーションは目的が違う

「納得」コミュニケーションでは,周りからの意見を自分自身の中に取り込んでいきます。 いわゆる”腑に落ちた”という状態です。

腑に落ちる,つまり体の中に落とし込めたという事です。 何を,身体の中に落とし込むのか。それは,その行動を変える「理由」です。

それに対して,「説得」コミュニケーションでは,今言われたから言われた通りの行動を起こしたというだけに過ぎません。 いわば,行動を変えるという事が目的なのです。

「説得」と「納得」の大きな違いの一つがここにも表れています。 それぞれ,行為の目的が異なるのです。

「納得」コミュニケーションならその後の行動も変わる

「納得」コミュニケーションでは,行動を変えるための「理由」を理解してもらうことを大切にします。 だから,子どもにとってはなぜその行動がいけなかったのか,変えなくてはならなかったのかが分かります。

理由がわかるから,子どもは状況が変わった時にもその時の経験を基に,考えて判断することができる様になるのです。

「納得」コミュニケーションをするために大切なこと

では,「納得」コミュニケーションをするために大切なこと,必要な事とは何なのでしょうか。

「説得」コミュニケーションが上から下の一方向のコミュニケーションであったのに対して,「納得」コミュニケーションは,理由や状況を説明する側とそれを聞き理解する側の双方向のコミュニケーションだというのがまず前提です。

だから,一方的にこちらの言い分を相手に伝え,伝えっぱなしで行動の変化を求めたりはしません。 必ず,相手の言い分も聞くことが大切です。

たいていの場合,子どもであっても行動には理由があります。 おもちゃを出しっぱなしでいた時も,もしかしたらその子はまたその後すぐ同じおもちゃで遊ぼうと思っていたため,そのままおもちゃを出していたのかもしれません。 はたまた,他の遊びにもっと気をひかれてしまったために,そのおもちゃの存在は忘れて他の遊びに行ってしまったのかもしれません。

ここで大切なことは,その理由が「正しい」か「正しくない」かは問題とはしないという事です。

子どもにとって例えば,正しかったり,効率的,望ましい判断を下すことはなかなか難しいことです。 時には,子どもならではの”屁理屈”をこねて自分の意見を言うかもしれません。

でも,そこで意見の対比をすることが,考える力を養うために非常に大切な事なのです。

相手を言い負かすことは「説得」コミュニケーションです。 相手の言い分を聞いた上で,望ましい行動とのずれを聞いてもらったり,その理由を伝えていき,子ども自身に理解してもらう事が「納得」コミュニケーションの肝心要の部分と言えるでしょう。

大人の言う事を聞かせる,のではなく一緒に考えていく姿勢こそが「納得」コミュニケーションに大切なことです。

まとめ

今回は,子育てや子どもの成長に関わる仕事をしている人に向けた”理念”のお話です。

僕自身,ときどき子どもに対して「説得」コミュニケーションで臨んでしまっている時があります。 大人は子どもよりも経験もあるし,知識もある。 だからこそ,子どもに対して”言い聞かせて”しまうことがあります。

もちろん,知識としてこの状況の時はこういう行動を取った方が良い,情報は子どもの中に入ります。 でも,それだけでは子ども自身の考える力は成長していきません。
どうして,そういう行動を取った方が良いのか。 この時にこの行動をしてしまったのはどうしてまずかったのか。

そういった理由の説明なしに行動の変化だけを求められていても,それ以外の状況の時はまたどうしていいのかわからなくなってしまう事もあります。

子どもの言い分を聞くこと。 理由を丁寧に伝えていくこと。

これは,なかなかに手間と根気の必要な事です。 しかし,子育てや子どもの成長において非常に大切な部分でもあります。

ぜひ,”面倒くさがらず”に子どもの「納得」できるコミュニケーションを試してみませんか。 もしかしたら,子どもの行動が大きく変わっていくかもしれません。

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ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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