発達支援の入門【旧:いまさら講座】

【いまさら講座】発達障害と感覚過敏

どうも,発達障害支援の心理屋まっつんです!

「いまさら講座」とは

放課後等デイサービスで働く職員の中には,発達障害支援未経験の人も少なくないですよね。 まっつんが働いている放課後デイでも,未経験者や教育や福祉の他の分野から放課後デイに入ってくる人も結構います。

でも,なかなか基本的なことについて学ぶ機会がなかったりするんですよね。

そこで,いまさら他人には聞けない。そんな”そもそも”を解説する「いまさら講座」開講します。

今回のテーマは「感覚過敏」

今回は「感覚の過敏について」。

感覚過敏という言葉,現場にいると日常的によく聞く言葉ではないでしょうか?
申し送りで「あの子は,聴覚と触覚の過敏があるから気を付けてね」なんて言われることも。

でも,そういえば感覚の過敏ってどういうことなんだろう?感覚が鋭いことと同じことなのかな?

そんな疑問を今回は簡単に解説していきましょう。

そもそも「感覚の過敏」とは

感覚とは,一般的には五感(視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚)のことですね。 これにプラスして,平衡感覚や運動感覚,内臓感覚なども感覚の一つとして数えられます。

「過敏」というからには,過剰に敏感な感覚であるという事は言葉から想像できるところですよね。

本来,人間は自分に不必要(だと判断した)な感覚情報は,フィルターの様なものを通して弱めることができます。 発達障害の子の場合,そのフィルターが上手く機能しなかったり,弱かったりするために,不必要な情報でもダイレクトに知覚してしまうのです。

また,時としてそのフィルターが感覚刺激を強めてしまう事もあるため,通常の感覚情報より強く感じ取ってしまうことにもなります。

つまり,意図的ではなく,感覚情報が必要以上に強く認識されてしまうために,感覚過敏といわれる状態が現れてくるのです。

一般的に「鋭い感覚」といわれる状態とはちょっと異なります。
耳が良い人,というと様々な音を聞き分けられたり,味覚の鋭い人は出来上がった料理から,使われている食材や調味料を言い当てたりすることができます。 これは,感覚を上手くコントロールできているためにその様な差異を分けて捉えることができています。

一方,感覚過敏の問題ではその刺激をコントロールすることが難しい点が根本にあるので,いわゆる「鋭い感覚」とはまた少し違った感覚なのです。

五感に現れる特徴

では,具体的にはどんな「感覚過敏」の特徴があるのでしょうか。 五感にまつわる特徴的な感覚の過敏を見ていきましょう。

◯視覚・太陽光を強く感じてしまいまぶしい ・蛍光灯の明かりが苦手 ・LED電球の明滅がちかちかしてしまい気になる

◯聴覚 ・突然の大きな音が苦手 ・人込みでざわざわした音が反響して聴こえる ・周囲でいろいろな音や話し声がしていると,目の前の話が聞こえない

◯嗅覚 ・混ざったにおいが苦手 ・香水や洗剤のにおいなどで酔ってしまう

◯味覚 ・特定の味しか食べられない,特定の食感のものしか食べられないという偏食 ・味が混ざったものが苦手

◯触覚 ・服のタグなどがチクチク当たるとストレス ・軽く触れられているだけでも痛いと感じてしまう ・熱いものや冷たいものを触れない

これらは,まっつんが実際に見聞きした特徴の中から一部をあげさせてもらいました。 それでもざっと,これだけ特徴的な感覚の過敏があります。感覚過敏の問題は,とても広範囲に及ぶものなのです。

感覚過敏への対応

感覚の問題は,共通的に似通っているものから,個人個人で異なるものまで幅広くあります。 とあるメーカーの洗剤のにおいがとにかく嫌い!という子もいるくらい,とても個人的な問題でもあるのです。

だから,すべての発達障害の子に共通した対応というのは現実的ではありません。

ただ,それでも共通して言えることは,感覚の問題は「個人の好き嫌い」の問題ではないという事と,単純な慣れの問題でもないという事です。

特に,偏食などの問題では「好き嫌い」の問題とすり替えられて考えられてしまうこともあります。 感覚の過敏によって起きる偏食では,単純な好き嫌いという話ではなく,その子にとっては「受け付けない感覚」であるため食べられない,という事を覚えておいてください。

やわらかい食感が苦手で,ヨーグルトはまるでスライムを食べているように感じていることだってあります。

スライムは誰だって食べたくないですよね。

音の問題で言えば,ざわざわした環境が苦手な子に,「慣れれば大丈夫!」というもの感覚過敏の問題はそんなに単純ではありません。

延々と割れた音のイヤホンで大音量の知らない音楽を聞かされ続ければ,誰でもまいってしまうでしょう。

感覚はそれぞれの個人によって程度や差のある問題です。同じ聴覚過敏を持つ子でも,「あの子が大丈夫なんだからあなたも大丈夫!」というのは通じないのです。

発達障害支援の全般に言えることですが,その子その子に合わせたテーラーメイドの支援を考えていくことが最も大切なことになります。 例えば,過敏な感覚を持っているために,疲れやすい子には,感覚刺激の少ない部屋で休む時間を用意するなど,その子の状態に合わせた合理的な配慮を考えていきたいですね。

ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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