放課後デイあれこれ

放課後デイの送迎は本当に無駄な時間なのか?送迎時間をプラスに活かす!

放課後等デイサービスの主要なサービスの1つとなっている「送迎」。

送迎に関しては,1時間~2時間にわたるような長時間の車内ドライブが問題にも挙げられています。 一部では送迎加算をなくそうという動きもあります。

放課後デイにおいて送迎は無駄な時間なのか。

決してそんなことはないと私,まっつんは考えます。

今回は,放課後デイにおける送迎の時間を有意義な時間とするためにはどうすれば良いのかを考えていきたいと思います。
保護者の方々には,放課後デイのスタッフが日々送迎車の中でこんなことをしているんだな,と知ってもらえる機会になればうれしいです。

送迎の時間は無駄な時間か


放課後デイのサービス加算から送迎加算を外そうという動きがあるようです。 背景として,3つの点が指摘されています。

1つ目は,長時間に及ぶ送迎や実質ドライブだけで一日の大半の時間を過ごす,と言った様な悪質な事業所が出てきていること。

2つ目は,送迎の安全性の確保の問題。 送迎を行っているスタッフも運転の専門家という訳ではなく,あくまで放課後デイの一スタッフが送迎を行っているのが現状です。

3つ目は,送迎を行うことで,電車やバスといった公共交通機関を利用する練習が妨げられてしまうと言った自立支援への指摘です。

この点はまさに,その通りの指摘だと僕も思います。

長時間の送迎は,ただでさえ疲れやすい子たちにとっては大きなリスクです。 酔い易い子だって多くいます。

そもそも本来の療育的サービスを受けられる時間が送迎によって減ってしまうというのは本末転倒でしょう。

安全性の面,自立支援の面からも「送迎サービス」の是非は考えられるべきでしょうが, 実際問題として送迎を必要とされている親御さんも少なくはないというのも現状です。

現代は共働きのご家庭も増えています。 そんな世間の風潮の中では,送迎サービスにも依然としてニーズはあることでしょう。

だったら,われわれ放課後デイスタッフとしては,送迎の時間もできるだけ有意義な時間としていきたいではないですか。

そう,送迎車内は事業所のなかではできないことが出来る,貴重な時間でもあるのです。

送迎車内で行うべきこと

送迎車内で行いたい重要な事,それはやはり「その日のアセスメント」。

その子の,その日の体調や様子を事業所につくまでに観察することが出来ます。

送迎車の中で会話をしておけば, 「あれ,今日はいつもより反応がにぶいぞ」 「今日はなんだか元気がないのかな」 といったことが予めわかります。

その日の学校での様子を聞いておくのも役に立ちます。

学校で先生に怒られたというときには, 放課後デイに来てからフォローすることもできますね。
「こんなことを学校でほめられたよ!」 という時には,放課後デイでもその点を取り上げられたり,スタッフ間でシェアすることでもっと盛り上げていくことだってできます。

また,帰りの車内では時として 「今日は○○くんからこんなこと言われて嫌だった」 「○○さん(スタッフ)の声が大きくて嫌だった」 なんて事が聞かれる時もあります。

もちろん,スタッフとしては耳の痛い話も出て来る時もあります。 でも,事業所から離れたことで安心して話せることもあるのです。

当の本人達がいる前ではなかなか言いづらいこともありますよね。

送迎の車内ではこうした,事業所を離れた瞬間だからこそ語られるふとした本音,が聞ける場合があるのです。

送迎をもっと豊かな時間にするために

他にも,事業所内では他にも多くの子どもがいるため,なかなか一人の子の話をじっくりと聞くという訳にはいかないこともあります。 (他の子の声や雑音も多いので,子どもも落ち着いて話せなかったり,他の子のことを気にして話しづらいといった子も)

そういう子には,送迎車内で1対1ないしは,スタッフと少数の子だけになる瞬間は,自分の好きな話をできる貴重な時間になります。

事業所内では他の子がいてできないようなこと,例えば「音楽を聴きながら大きな声で歌う」時間として活用することだってできます。

共同注視の弱い子には,走ってくる車や周りの景色を見ながら視線を共有する練習をすることだってできます。

まとめ

どうでしょうか。割と送迎の車内と言えど子どものためにできることは,多くありませんか? ただ,やはりこの様に送迎車内で子どもと向き合うためには,運転手と同乗者1名の最低2名での送迎体制が必要でしょう。

最低2名体制はもちろん先の安全確保のためにも必要な事だと思います。

送迎車内でアセスメントをすることで,その日の事業所内での療育活動をさらに実りのあるものにすることが出来ます。 その日のフィードバックを子どもから受けることで,次の日以降の対応を考えることが出来ます。

子どもにとっては貴重な”自分だけの時間”になることもあります。

この様に,放課後デイにおける送迎の時間は,決して無駄な時間ではなく,療育活動につなげることができる有意義な時間なんです。

ただし,この時間を有意義にできるかどうかはスタッフの力量にかかっていると言っても過言でないでしょう。

この記事の内容は現場でしっかりと子どもに向き合っているスタッフはきっと無意識のうちにやっている内容です。 でも,無意識にやっている内容を意識化して行ったり,他のスタッフと共有していくことでもっと事業所としての質は上がっていくと思います。

放課後デイスタッフとしては,送迎の時間さえも子どものために価値ある時間としてつなげていく,そういった意識も大切なのではないでしょうか。

一方で,自立のために公共交通機関の利用を促していくことも大切なことです。そこらへんについては,また別の記事を書きたいと思います。

以上,まっつんでした。

ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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