【自己実現】
 個人の中に存在するあらゆる可能性を自律的に実現し,本来の自分自身に向かうことを指す。(心理学辞典,有斐閣より)
 
 

〇自己実現とは

一般的にもかなり用語として浸透した感じのある「自己実現」。
ビジネス書などで目にする機会は結構多いですね。
 
もともとは,K.ゴールドシュタインという神経心理学者が,脳損傷患者が残された能力を可能な限り発揮しようとする傾向を「自己実現の欲求」と名付けたのがその始まりです。
 
ゴールドシュタインの考えから着想を得て,人間の成長過程を理解するための理論として整理したのが,かのA.H.マズローです。
 
マズローは人間性心理学という立場から,「個人の持つ潜在力を十分に発揮し成しうる最大限の事をしようとする」欲求として,自己実現の欲求を再定義しました。
 

〇自己実現に至るまでの道のり

マズローは人が自己実現に至るまでの過程として,人が生きていくために満たさなければならない欲求を示しました。
 
それが,欲求の階層説と呼ばれる考え方です。
 
食事などの生理的欲求や安全の欲求といった生きていくために最低限必要なものから,所属の欲求や承認の欲求と言った社会的な欲求を経て,より高次の欲求としての「自己実現」を位置づけたのです。
 
自己実現以前の欲求は人が生きていくために必要になるものなので,欠乏欲求とも呼ばれます。
 

〇自己実現の達成から至高体験へ

マズローは,自己実現を達成したと思われる人々のインタビューを通して,彼らに共通の体験があることを発見しました。
 
それが,至高体験と呼ばれるものです。
 
至高体験とは,自分や他者の特性をそのまま受け入れ,他者に対して寛大であり,自我を超越した状態,などの状態の事だそうです。
 
個人としての固執などから解放された状態であり,いわゆる仏教などにおける「悟り」の状態に近いのかもしれませんね。
 
人は,他者によって満たされる欠乏欲求の充実を経て,自己実現からまた今度は他者へと向かい直るのです。
 
 

〇療育へのまなざし

自己実現は,福祉の世界におけるエンパワメントの基本ともいえます。
 
エンパワメントは,環境を整えたり,適切なサポートをすることで,その人が本来持っている力を再び十分に発揮できる状態にすることです。
 
療育においても,その考え方は重要です。
 
発達障害を持つ子では,感覚の過敏や認知の凸凹さという特性から本来持っている力を十分に発揮できない場合も少なくありません。
 
混乱した状況ではできなかったことでも,環境調整をして,特性に合ったサポートをすることで,本来の力を出せれば課題をクリアすることもできるかもしれません。
 
現状のその子の力にプラスする何かを育てるという考え方にプラスして,現状のその子が持っている力を最大限に発揮できるようにすることも療育ではとても大切な事なのです。
 
さて,自己実現はそれ以前の欲求が満たされた状態でないと実現できない高次の欲求といわれています。
 
生理的欲求や安全の欲求は,現代の日本では比較的強固に保証されていますが,所属と承認の欲求は他者が必ず関与しなければ満たされない欲求です。
 

ソーシャルスキルトレーニングなどで対人関係の対処方法を学ぶことも重要ですが,それ以前に障害のあるなしに関係なく,すべての子ども達に所属できる場や承認を得られる機会を多く提供していくことは我々大人たちの責務なのかもしれません。

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