発達支援の入門【旧:いまさら講座】

【いまさら講座】そもそも「発達」って何?

「発達」ってなに?

どうも,まっつんです!

いまさら他人には聞けない。そんな”そもそも”を解説する「いまさら講座」です。 今回は,「そもそも『発達』って何?」という事で,なんとなくわかった気がしている「発達」という言葉を改めて確認していきたいと思います。

「発達」とはなんなのか?

「発達」という言葉は子どもに関わる仕事に就いている人で聞いたことがない人はいないでしょう。
日常語としても何気なく使っている「発達」。
じゃ,そもそも「発達」とはなんなのか。
「発達」に似た言葉に,「成熟」という言葉があります。 「成熟」はどちらかというと,身体的・生物学的な成長過程を表すのに対して,「発達」はそれらの体の成長をもふくめた,子どもが生まれてから大人になり,老人までにも及ぶ,生涯にわたる変化の事をさします。
人は生まれてきてから死ぬまでに,絶えず環境に適応していこうとします。その過程で少なからず,身体や内面の能力を伸ばしたり,変化させたりする必要があるのです。 それが,いわゆる「発達」と呼ばれる現象です。
また,似たような言葉に「学習」もあります。 「学習」は”経験による行動の変化”。「学習」を「発達」に含めて考える場合もありますが,心理学などの厳密な議論の時は分けて論じられることも多いです。
では,その発達的変化は,どのように引き起こされるのか。

氏か育ちか

過去において,「氏か育ちか論争」と呼ばれるような,氏=遺伝的要因と育ち=環境的要因のどちらが発達により影響を与えるのか,と言った論争が発達心理学の世界で巻き起こっていました。
結論から言ってしまうと,今は「氏も育ちも」両方を考慮した視点が中心となっています。 遺伝の要因と環境の要因が相互に作用しあって,その人の発達をつくっていくのです。
さらに,現代の様な高度に文明化された時代においては,発達に対して社会的・文化的影響もとても大きくなります。 もちろん,そこには他の人が与える様な対人的影響もでてくるわけです。

発達にまつわるいろいろな理論

発達を捉えようと,心理学者は様々な理論を今までに打ち立ててきました。 代表的なものは,ピアジェによる発生的認識論です。

・ピアジェの発生的認識論

ピアジェは,人は環境と相互作用する中で,認識を発達させていくとして発生的的認識論を唱えました。 “同化”と”調節”を繰り返し,”シェマ”と呼ばれる行動や思考の様式を変化させ,環境に適応していくことが人の発達であるとしました。
そして,その発達の段階を「感覚運動期」「前操作期」「具体的操作期」「形式的操作期」の4つに分けて捉えました。
ピアジェの発生的認識論は,遊びの段階を捉える上でも非常に重要で,子どもが環境との間で試行錯誤しながら,自己を”調整”していったり,自分に合うように”同化”させて吸収していく過程を整理して捉えることができる様になります。

・エリクソンの心理・社会的発達段階

ピアジェの発生的認識論が主に学童期までの発達を捉える理論であったに対して,エリクソンは人生全体をその範囲に入れたライフ・サイクルの考え方を示しました。
そして,それぞれの発達段階で生じる「心理・社会的危機」を挙げ,対立する危機の葛藤の解決が発達において重要であるとしました。 例えば,学童期の「心理・社会的危機」は「勤勉性・対・劣等感」で,自己の能力を発揮していく過程において友達づきあいや同年代の対人関係が影響を及ぼすとしています。

・ハヴィガーストの発達課題

エリクソンと同じく,発達段階ごとに重要な課題があるとしたのがハヴィガーストです。
ハヴィガーストは,発達の各時期にふさわしい役割や身体的・内面的な発達を獲得することが,その次の発達課題の習得に影響するとしました。 これらの発達課題は段階的で,教育の目標でもあるとされています。

・ヴィゴツキーの発達の最近接領域

教育に影響を及ぼした理論には,ヴィゴツキーによる「発達の最近接領域」の考え方もあります。 発達は,文化だけでなく他者の援助や集団的な作用と言った社会的な要因も影響を与える,それが「発達の最近接領域」の基になった考え方です。

子どもの発達には,現在の到達水準と現在発達・形成中の水準とがあります。 現在発達・形成中の水準は,自分一人ではできないけれども,教師や他の人の手を借りればできるといった水準のことです。
現在ひとりでできる水準と,誰かの助けを借りればできる様になる水準を見極めることは,療育を考えていく上でも非常に大切な視点です。

発達を支援するとは

さて,ここまで「発達」という言葉を改めてみてきました。「発達とは生涯にわたる変化」です。 では,その「発達」を支援するとはどういったことなのでしょうか。
これまで見てきたように,発達とは環境への適応という意味合いが大きくあります。 つまりは,発達支援とは,「その子が環境へ適応していくための力を支援し,伸ばすこと」とぼくは考えています。
もちろん,環境によっては到底適応できないような悪環境も存在します。そういう場合においては,環境への適応というよりも環境調整が優先されます。
ただ,あくまで発達支援の基本は,「○○ができるようになった」や「勉強ができるようになった」「計算スピードがあがった」「ソーシャルスキルを覚えた」などパッと目にみえることだけではなく,「その子がいかに生きやすくなるか」=適応できるかどうかを問う視点は必要不可欠なのではないでしょうか。

まとめ

今回は,「そもそも『発達』って何?」と題して「発達」という用語にまつわる話を概観してきました。
普段,なんとなく使っている用語でも,改めてその意味を考えてみることで,支援の基本に立ち返れたりします。 また,普段何気なく使っている言葉こそ,仲間内でその意味の確認や共有をしておくことで,些細な意識の齟齬を防ぐこともできるので,単純なことこそ,日頃から確認しあうことがチームで対人支援に臨むときは大切ですよー(^^)

ではでは,今回は以上です!

ABOUT ME
まっつん|発達支援の心理屋
〈記事監修〉公認心理師/社会福祉士 大学・大学院で臨床心理学を専攻。主に愛着(アタッチメント)の発達とその認知過程について研究を行う。大学在学中より培ったグループワークを活かし放課後等デイサービスで発達障害を持つ子の支援にあたる。現在は発達支援の情報発信をしながら支援に携わる人に向けた「支援する人も楽になる働き方」コンサルやアドバイザーをつとめている。
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